前  周生期学部 研究テーマ(その4) 次


低酸素虚血性脳症におけるδEF1の機能

  • 東 雄二郎(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、周生期学部)
  • 中西 圭子(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、周生期学部)
  • 時田 義人(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、周生期学部)
  • 松井ふみ子(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、研究企画調整科)

 新生児脳症や脳性麻痺の一因としては、出生時仮死による低酸素負荷や周生期の脳内出血などが原因で発達中の脳の神経細胞が死んでしまうことによる場合もあります。この時期の脳の神経細胞は特に低酸素状態に弱いのでしょうか?  もしそうであればどのような細胞内の状態に因っているのでしょうか? また脳神経細胞の低酸素状態がどのような細胞内の変化をもたらし、細胞死へと導かれるのか、まだそのほとんどが明らかにされていません。固形癌組織中の細胞の一部は低酸素状態になることが知られていますが、その中で発現が増加してくる因子と一つとして、zfhx1ファミリーの一つであるδEF1 (ZEB1) があります。最近この因子が周生期の脳の低酸素状態の際にもその発現が上昇してくることが明らかになりました。このことは、δEF1が低酸素状態にある細胞において何らかの役割を担っている可能性を示しています。私たちは低酸素虚血性脳症モデル動物やδEF1ノックアウトマウス等を用いながらδEF1の低酸素状態における機能を明らかにしたいと考えています。このような分子レベルでの研究によって、低酸素状態によってもたらされる脳症の予防と治療に何らかの手がかりを与えてくれるものと期待しています。

関連論文
  1. Bui et al. (2009)  ZEB1 Links p63 and p73 in a Novel Neuronal Survival Pathway Rapidly Induced in Response to Cortical Ischemia
    PLoS ONE  4: e4373